産業界で始まった総合的品質管理を意味するTQMは、医療活動の質を向上させることにも役立っています。
医療分野では、Qualityのことを「品質」ではなく「精度管理」と呼んでおり、TQMは通常「総合的医療内容管理」と訳されます。
TQMが医療分野で注目されるようになったのは、DRG/PPSという「診断群別包括支払い方式」が採用され、医療の質を下げずにコストを削減する必要に迫られた1987年ごろのことです。
今までは、医療分野では医療の質よりも患者の生活の質のほうが問題視されていました。
医療の質は標準規格なるものが存在しないため、医師間や病院間の差を明確に表すことは困難です。
しかし、経済界において、企業が顧客を中心に顧客のニーズに応える質を提供することを目指しているように、医療界でも、患者を中心に考え、安心と信頼を提供できるよう、医療の質を向上させ維持することが必要となってきました。
現在、TQMに取り組んでいる病院は数多くあります。
たとえば、岡山にある旭東病院は、院内に「TQCセンター」を設け、倫理委員会、感染委員会などの各種委員会を縦軸としたつながりのある組織を作っています。
旭東病院では、全体の組織が組織医療安全管理部会と経営管理部会の2つに分かれ、それぞれの部会の部長同士で意見を交換したり、話し合いをしたりする機会をたくさん設けています。
また、仙台社会保険病院では、院内にTQM推進委員会を設置し、病院の基本理念をもとに、医療の質を守り改善していくよう努めています。